犯罪ごとに起訴状例を載せるとともに、その内容を説明します。
【起訴状例】
被告人は、金銭を詐取しようと企て、令和 年 月 日午前 時 分ころ、東京都内から、品川区甲方に電話し、同人に対し、同人の息子であるかのように装って、「交通事故を起こしたんだけど、相手がヤクザで、示談金100万円を払わないと殺されちゃう。助けてくれ。口座をしていするから早く振り込んでくれ。」などと言い、その旨上記甲を誤信させ、よって、令和 年 月 日午前 時 分ころ、同人をして、品川区 所在の●●銀行●●支店において、被告人が管理する乙名義の普通預金口座に100万円を振り送金させてその交付を受け、もって、人を欺いて財部とを交付させた。
【説明】
刑法246条は詐欺罪の処罰を規定しています。
【条文】
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【起訴状例】
被告人は、甲から同人が東京都品川区 株式会社Aに対して有する売買代金債権400万円の取り立てを依頼され、令和 年 月 日、同会社において、同社社長Bから上記債権を取り立て、これを甲のため預かり保管中、同日、東京都新宿区所在の甲宅において、甲に現金300万円のみを交付し、残額100万円をほしいままに自己の用途に費消するため着服して横領した。
【説明】
刑法第252条は、横領罪の処罰を規定しています。
【条文】
自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
【起訴状例】
被告人株式会社甲は、東京都品川区所在の●●ビル3階に本社を置き不動産仲介事業を営むもの、被告人乙は被告人会社の代表取締役であるが、被告人乙は、被告人会社の営業に関し、東京都知事の登録を受けないで、別紙貸付関係一覧表記載のとおり、平成 年 月 日ことから令和 年 月 日ころまでの間、同所において、Aほか99名に対し、前後100回にわたり、現金合計5000万円を貸し付け、もって、登録を受けないで貸金業を営んだものである。
【説明】
貸金業法では、無登録営業を禁止しています(47条2号・11条1項・3条1項・51条1項1号)。
【条文】
(登録)
第3条
貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
(禁止)
第11条
第3条第1項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。
(罰則)
第47条
次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 不正の手段によつて第3条第1項の登録を受けた者
2 第11条第1項の規定に違反した者
3 第12条の規定に違反した者
(両罰規定)
第51条
法人(人格のない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
1 第47条、第47条の2、第47条の3第1項第4号又は第48条第1項第8号の7、第9号、第9号の8若しくは第9号の10から第9号の12まで 一億円以下の罰金刑
【起訴状例】
被告人は、法定の除外事由がないのに、令和 年 月 日ころ、東京都品川区の自宅において、株式会社甲が著作権を有する映画の著作物「●●」とDVD合計100枚に録画して複製し、もって、著作権を侵害した。
【説明】
著作権法は、著作物の複製を禁止しています(119条1項)
【条文】
第119条
著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第30条第1項(第102条第1項において準用する場合を含む。第3項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第113条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者、同条第4項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第5項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第120条の2第3号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第113条第6項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第3号若しくは第4号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
【起訴状例】
被告人は、令和 年 月 日、代表取締役を務める有限会社の業務に関し、薬局開設者または医薬品販売業の許可を受けた者ではなく、法定の除外事由がないのに、業として、販売目的で、雑誌に厚生労働大臣の承認を受けていない医薬品である化粧品の広告を掲載し、同大臣の承認を受けていない医薬品の名称、効能及び効果等を広告した。
【説明】
薬事法では、承認前の医薬品等の広告を禁止しています(68条)。
【趣旨】
承認(認証)前においては、申請内容がそのとおり承認(認証)されるか否かは不明であり、承認(認証)前の広告は、承認(認証)内容のいかんにより、虚偽又は誇大な広告になるおそれがあるため、これを未然に防止するために本条が設けられています(厚生労働省)。
【条文】
第68条
何人も第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
【起訴状例】
被告人は、甲から同人が東京都品川区 株式会社Aに対して有する売買代金債権400万円の取り立てを依頼され、令和 年 月 日、同会社において、同社社長Bから上記債権を取り立て、これを甲のため預かり保管中、同日、東京都新宿区所在の甲宅において、甲に現金300万円のみを交付し、残額100万円をほしいままに自己の用途に費消するため着服して横領した。
【説明】
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律は犯罪収益等の収受を禁止しています(11条)。
犯罪収益を収受する者がいるからこそ、犯罪収益の隠匿も容易になり、また、その運用や再投資の可能性も広がってくる。したがって、犯罪収益の収受行為にも間接的には犯罪収益による再投資を容易にする関係が認められるため、処罰の対象とされているのである(山口厚編著「経済刑法」128頁参照)。
特殊詐欺の受け子がこの犯罪に該当することがあります。
【条文】
第11条
情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。
【起訴状例】
被告人は、●●と共謀の上、いずれも法定の除外事由がないのに、令和 年 月 日ころ、東京都品川区東五反田 番地先路上に駐車中の自家用普通乗用自動車(品川●●●や●●●●)内において、氏名不詳者らが××からだまし取って得た犯罪収益である現金 万円を、●●が、その情を知りながら▲▲から受け取り、もって、犯罪収益を収受した。
【起訴状例】
被告人は、法定の除外事由がないのに、令和 年 月 日午後 時ころ、東京都品川区付近道路において、自動車登録ファイルに登録を受けていない普通自動車(車台番号AAA●●●●●●ー○○○○○○○○)を運転して運行の用に供した。
【説明】
道路運送車両法は、無登録自動車の運行を禁止しています(108条1号、4条)。
回送自動車を回送運行許可番号標識を見やすいように表示するなどして運行の用に供するときは、第4条の規定は適用されません(36条の2)。
【条文】
第4条
自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。以下第29条から第32条までを除き本章において同じ。)は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
第108条
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
1 第4条、第11条第5項、第20条第1項若しくは第2項、第35条第6項、第36条、第36条の2第7項(第73条第2項において準用する場合を含む。)、第54条の2第7項、第58条第1項、第69条第2項又は第99条の2の規定に違反した者
【起訴状例】
被告人は、東京都品川区所在の飲食店「●●」を経営するものであるが、東京都公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、令和 年 月 日午後 時ころ、同店において、営業として、甲ほか数名の客に対し、ホステスA女ほか3名をして客席で同席して話し相手になるなどの接待をさせると共に、酒肴を提供して飲食させ、もって、無許可で風俗営業を営んだものである。
【説明】
風営法は、無許可風俗営業を禁止しています(49条1号、3条1号、2条1項2号)。
「風俗営業」は、第2条1項1号ないし8号のいずれかに該当するものをいい、都道府県公安委員会の許可を受けなければ営業することができません。
許可は、風俗営業の種別に応じて、営業所ごとに受けなければなりません。
【条文】
(用語の意義)
第2
この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
1 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
(営業の許可)
第3条
風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第1項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
(罰則)
第49条
次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 第3条第1項の規定に違反して同項の許可を受けないで風俗営業を営んだ者
【起訴状例】
被告人は、中華人民共和国の国籍を有する外国人であり、平成 年 月 日、同国政府発行の旅券を所持し、大阪府所在の関西国際空港に上陸して本邦に入った者であるが、在留期間は平成 年 月 日までであったのに、同日までに在留期間の更新又は在留資格の変更の申請を行わず、在留期間の更新又は在留資格の変更を受けないで本邦から出国せず、令和 年 月 日まで東京都内などに居住するなどし、もって在留期間を経過して不法に本法に残留したものである。
【説明】
出入国管理及び難民認定法は、在留期限を超えた不法残留を処罰します(70条1項5号)。
【条文】
第70条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
5 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第20条第6項(第21条第4項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者
【Q&A】
Q:在留期限を超えて不法残留していますが、入管局に出頭して今後も引き続き日本での生活を求める手続を行っていますので法律的には何の問題も無くなったのでしょうか。
A:出頭申告された方の中には「入管局に不法残留等を申告したので、法律的には何の問題もなくなった。法違反の状態は解消された。」と誤解される方が多いようです。
入管局に外国人の方が出頭申告しても、直ちに不法残留等の状態が解消されたわけではなく、法務大臣から特別に在留が認められない限り、入管法に違反している状態に変わりはないということです。
したがって、法務大臣の判断がくだされるまでは、原則的には、就労も認められていませんので、働いている工場や会社などで入管法違反により摘発されることもあります。
Q:日本から退去強制された者や出国命令を受けて出国した者が、再び日本に入国することは可能ですか。
A:日本から不法残留等を理由に退去強制された者や出国命令を受けて出国した者は、入管法の規定に基づき、原則として、一定期間(これを上陸拒否期間と言います。)日本に上陸することはできません。具体的には以下のとおりです。
① いわゆるリピーター(過去に日本から退去強制されたり,出国命令を受けて出国したことがある者)の上陸拒否期間は、退去強制された日から10年
② 退去強制された者(①の場合を除く)の上陸拒否期間は、退去強制された日から5年
③ 出国命令により出国した者の上陸拒否期間は、出国した日から1年
また、日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた者や麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられた者は、上陸拒否期間に定めはなく、日本に上陸することができません。
(以上、出入国管理庁より)
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